ピ姉さんのつぶやき › 短編 › ノンちゃん、今すぐ、買いに行けや

2015年10月29日

ノンちゃん、今すぐ、買いに行けや

月

が、そのとき、ピ姉さんの閉じていた瞳がパッと開き、私はドキッとした。カラコンなのだろうが、占いは別にしても、異次元の世界で瞳が輝いている。
ピ姉さんが何か言おうとした時、私の質問が先に声になっていた。
「カラコンは何を使ってます?」
ピさんは、占いを告げる前、愕然とする瞬間も見逃し、答えた。
「ワンデーアキュビューディファインの、ラディアントブライト」
誰もからかったりちゃかしたりする余裕がなかった。
桂は、まるで大切な財宝のありかを知ったかのように、私に告げる。
「ノンちゃん、今すぐ、カラコン買いに行けや」
私もあたふたと出かけそうになるが、田辺が止めた。
「こんな時間やし、どこも開いてないで」
「そ、そうやな」
私は浮きかけた腰を椅子に沈める。ピ姉さんは、話を進めた。
「ノン、と名乗る、あんたに必要なのではない。7つ年上の姉に必要なのだ」
「え?カラコンが?」
ピ姉さんは、仰々しくうなずく。
私はなんだか酔っぱらいのたわごとに付き合っている気がして、失笑した。だって、何か言いかけたピさんを遮ってカラコンの話をしたら、それこそが姉に必要だなんて、話が安直すぎる。占いでもなんでもない、売り言葉に買い言葉だ。
「・・・ノンよ。私は真実を告げるだけで、言葉を売り買いしない」
唐突に、ピさんは、攻撃をしかけてくる。
「あんたの兄嫁は、ヨレヨレだけど、カラコンをしてるでしょ?」
私は、ぎゃ!っと思った。
そうなのだ、兄夫婦は貧乏なくせに、嫁は会う度にきれいなカラコンをしているのだ。だからピさんの瞳が気になったのだ。
「今から帰って、このことをすぐに姉に告げよ」
ピさんは、まるでイエス・キリストのような佇まいで、そう私に指令した。

果たして、姉は私の、いや、ピ姉さんのつぶやきを元に、カラコンをするようになり、半年後には遅すぎた春を迎え、結婚するのである。恐るべき、ピさんのつぶやき。私はまた、近いうちに、ピ姉さんのつぶやきを聞きに行こうと決意する。


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Posted by 弘せりえ 2015mar at 16:25│Comments(0)短編
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